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THE CELLAR Toranomon

ワインセラーの
常識を覆す仕様で
新たな市場を開拓。

2025.05.02 Update
日本ヒーター機器株式会社 開発スタッフインタビュー

「温度管理のプロフェッショナル」として
繊細な管理が求められるワイン市場に挑戦。
これまでの経験を生かすため注目したのは同じ小売業界のスーパーマーケット業界
コンビニのシェア6割を占めるニッチトップ企業の新たな挑戦

日本ヒーター機器は、コンビニエンスストアの「缶・ペットボトル飲料ウォーマー」や「中華まんスチーマー」、ホットスナックや惣菜などの「ホットフードショーケース」を開発から製造、販売、メンテナンスまでワンストップで手がけている。コンビニエンスストアのシェア6割を占めるニッチトップ企業だ。

しかし、予測不可能な時代を迎えた今、強みとしているコンビニエンスストア業界で得た様々なノウハウを活かし、他の業界にもマーケットを拡大したい。コロナ禍が猛威を振るっていた2020年9月に、新製品開発プロジェクトが立ち上がった。

狙いをつけたのは、コンビニエンスストアで培った知見を横展開できる同じ小売業のスーパーマーケット業界だ。膨大な数の商品を取り扱っている中で、日本ヒーター機器が着目したのはワインだった。

大手スーパーでも常温販売が多く新たな需要につながると感じた
常温販売が主流のスーパーマーケット業界に着目

なぜワインなのか。それは、「適切な温度管理がなされていない」現状があったからだ。ワインは、赤・白などの種類によって「飲み頃温度」が異なる。とりわけ赤ワインは、冷蔵庫などではキープしにくい10~14度くらいが飲み頃と言われることも多いが、スーパーなどで例えるならペットボトルやビールなどの飲料が入っている冷蔵ケースの場合大凡3~6度であることも多く、6~10度の温度を飲み頃とされる白ワインでも販売の現場ではなかなか温度調節が難しい現状がある。

そういった理由から、スーパーマーケットでのワインは常温販売が主流となっている。つまり、消費者は購入後すぐに楽しむことができない。品質の維持も困難なため、ワイン好きにとっては食指が動きにくい場所だといえる。

しかしこれは、裏を返すと、温度管理さえできればニーズに応えられるということだ。しかも、ワインの国内消費量は年々増加。今後も伸びていくことが予想されており、コロナ禍で伸びた「家飲み需要」も依然として高い。常温販売されているワインを適切な温度管理をしながら販売することで、これまでのワイン販売のあり方を変え、新たなマーケットを生み出せると考えた。

ノウハウはある。日本ヒーター機器の製品はホットケースが多いが、弱冷蔵のドーナツケースを全国のコンビニエンスストアに一斉導入した実績もある。「温度管理のプロフェッショナル」として、冷蔵分野への本格的なチャレンジを決めた。2021年1月のことだった。

ワインのプレミアム感を演出することがポイント!
冷気の繊細なコントロールで困難な開発をクリア

具体的にどうワイン販売のあり方を変えようとしたのか。目をつけたのは「棚」で販売すること。ワインセラーはほとんどが床置き式で縦型なので、「棚」に置き、アピール販売することができない。購入意欲を高めるため、「棚」に置ける横型にした。

ワインを長期間(1年超)保管する場合、コルクを乾燥させないようワインを寝かせることが推奨されていることから、ほとんどのワインセラーはワインを横に寝かせており、ラベルが見えないことに着目。ワインを縦に置き、ラベルに照明を当ててきれいに見せることで、高級感を演出できると考えた。長期保管目的のワインセラーと差別化を図り、販売促進什器として「ショーケース」の役割を持たせることで、ワインの売上アップに貢献できると考えたのだ。さらに、高価なワインの盗難リスクを防止するため、鍵付きにした。

しかし、「横型であり縦置き」のワインセラーがこれまでなかったのは、それだけ開発が難しいことを意味する。スタイリッシュなデザインをキープしながら、必要な機能・性能をもたせるには時間がかかった。

まず「横型」の実現を阻んだのは、庫内温度だった。庫内温度を均一にしなければワインセラーとしての役割は果たせないが、冷たい空気は下に落ちやすい性質を持つため、横に行き渡らせるのは簡単ではなかった。冷蔵ユニットのレイアウトから庫内の壁面のカーブ形状の調整、冷気の吹き出し口の位置や角度、吹き出し量まで無限にある組み合わせを次々に試すことで、ようやく理想の設定を見出すことができた。

庫内の冷気の漏れを最小限にするのも大変だった。デザインを考慮すると、センターに支柱を設けて左右の扉の隙間をなくすという方法が使えないからだ。パッキンの硬さや重なり方もさまざまなパターンを地道に検証し、最適解を導き出した。

温度管理もさることながら、今後のさらなる進化にも注目が集まる
今後は省エネ効果や静音性のアップにも取り組む

照明も簡単ではなかった。通常、照明は上から照射するが、瓶の首や肩の部分が光ってしまう。生産者の思いが反映されているラベルを引き立たせるため、床面の埋め込み位置や光の強さ、光の色を何度も何度も変更・調整した。

盗難防止の鍵は、スタイリッシュな製品デザインを損なわないよう、ドアの下の隙間に埋め込んだ。

また、ドアが開けっ放しになってしまうとワインの温度が変化するほか、結露が発生してラベルが剥がれるおそれもあるため、ヒンジの形状や軸を工夫。自動的に閉じるようにしたうえ、機構部が見えないようヒンジの形状や軸も工夫した。

こうして試行錯誤を繰り返し、完成させたワインショーケースは「これまでになかった製品」とワインのプロフェッショナルたちから高い評価を受けている。目指したスーパーマーケット業界以外に、ワイン専門店も導入しているのは、ワイン販売の新たな可能性を生み出すと期待されているからにほかならない。

開発チームによれば、今後は省エネ効果と静音性のアップにも取り組んでいくという。さらに進化したワインショーケースが、ワインのポテンシャルをさらに引き出し、どのようにマーケットを広げていくのか注目したい。

企業詳細
日本ヒーター機器株式会社

「缶・ペットボトル飲料ウォーマー」 「中華まんスチーマー」 「ホットフードショーケース」等の加温機器を中心に、商品開発から製造、販売、メンテナンスまでを行う飲料・食品加温機器の専門メーカーです。

飲料・食品加熱機器 開発・製造・販売
本社:〒143-0016 東京都大田区大森北1-23-1 NETビル
TEL
03-3768-4111
HP
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日本ヒーター機器株式会社